ロボットアームのセンサー

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ロボットアームではどのような知覚がなされ、そのためにどのようなセンサーが使われているのかを整理していきます。ロボットアームの知覚は大きく3種類に分けられます。操作の対象物の知覚、ロボットアームの周囲の物体の知覚、ロボットアームの内部の状況の知覚です。対象物と周囲を知覚するためのセンサーを「外界センサー」と呼び、内部を知覚するためのセンサーを「内界センサー」と呼びます。

操作の対象物を知覚するセンサー

操作の対象物を知覚するためのセンサーのうち代表的なものは、カメラ、近接センサー、力覚センサーです。ベルトコンベアーにのった部品などの大よその位置を確認するために、カメラを使用します。例えばベルトコンベアーの上に電子基板やナットのように比較的平らな対象物が載っている場合は、普通のカメラ(2Dカメラ)で対象物の位置を把握することができます。一方で、対象物が自動車のフレームのように立体的な形をしている場合は、奥行まで知覚できる3次元カメラ(3Dカメラ)を使用したりします。

カメラだけでは対象物の位置を十分な精度で測定できない場合には、近接センサーを使います。近接センサーは、数mmから数cm程度の距離にある物体の距離を測定するためのセンサーです。カメラで把握した位置情報を元にエンドエフェクタを近づけていき、近接センサーの範囲に入ったら近接センサーの距離情報を元にロボットアームをより高精度に制御します。近接センサーには「渦電流方式」や「静電容量方式」といった種類が存在します。

対象物にエンドエフェクタが接触したら力覚センサーによってどのくらいの力加減で接しているかを測定します。この情報を利用することで、対象物の位置関係・材質などの状況や個体の誤差を吸収し、溶接・切断・把持などの動作を精度よく実行することが可能となります。力覚センサーは「歪みゲージ」という構造を使って作られていることが多いようです。

ロボットアームの周囲の物体の知覚

ロボットアームの周囲に人間や意図しない物体が入り込むと、ロボットアームと衝突してしまう恐れが生じます。事故を避けてロボットを安全に運用するために、周囲の物体を検知するセンサーを設置します。代表的なセンサーは、超音波センサー(ソナー)と赤外線の TOF センサーです。

超音波センサーは、超音波を発して物体に当たって跳ね返ってきた超音波を検出することで物体の有無を検知します。発してから跳ね返ってくるまでの時間を測定すれば、物体までの距離も知ることができます。「距離 = 時間 x 音速」の計算式です。赤外線の TOF センサーも同様の原理です。TOF は Time of Flight の略で赤外線の飛行時間という意味です。赤外線は光(電磁波)の一種ですので、計算式は「距離 = 時間 x 光速」です。いずれのセンサーも比較的安価でコンパクトに製作できることから広く使われています。

内部を知覚するためのセンサー(内界センサー)

ロボットアーム自身の内部の状態を知覚するセンサーは、関節を駆動するアクチュエータの種類によって使われるものが変わってきます。例えばステッピングモーターでは直接的に関節の角度を指示することができますので、内部の角度の情報を知る必要はありません。ただし、指定できる角度が例えば 1°刻みだったりと精度の高い位置制御をすることがしづらいというデメリットがあります。

高い精度で位置の制御を行う場合には、DC モーターや AC モーターが使われます。DC モーターと AC モーターはその構造や制御方法によってさらに種類が細分化されますが、入力情報が角度の位置情報ではないという点は共通しています。入力できる情報は、電圧と電流のみで、直接的に角度の位置情報を入力することができません。そこで、センサーによって角度の位置を検知して、フィードバック制御の仕組みによってモーターに入力する電圧と電流を決定して、モーターの位置をコントロールするという手法が使われます。

ロボットアーム向けのモーターで角度の位置情報を検出するためによく使われるセンサーは「ロータリーエンコーダ」です。ロータリーエンコーダは、LED(光源)、光センサー、周辺部に穴が空いた円盤という3つの要素で構成されます。円盤は、モーターの回転軸と一体になるように取り付けられます。そして、円盤の穴に光が通過するように LED を設置し、円盤をはさんでその光を検知できるように光センサーを設置します。モーターが回転すると円盤と穴も回転し、光が円盤を通過したり遮られたりします。こうして発生する光の明滅を光センサーでとらえ、後段の処理回路で分析することでモーターの角度を知ることができます。円盤に空ける穴の大きさとピッチを細かくするほど、検知できる角度の精度も高くなります。ただし、同じサイズの穴を同じピッチで配置するだけでは、角速度は分かりますが角度の絶対的な位置情報は得られません。角度の絶対的な位置情報を知るためには、円盤の位置によって穴の大きさを変えたり、大きさの異なる穴を円盤の中心に向かって複数並列に配置したりすることもあります。

その他、ロボットアームのリンク部分やエンドエフェクタ部分に「加速度センサー」を付けて、ロボットアームの動きの状況を把握することもあります。また、モーターに流れる電流値を測定するために「電流センサー」を使うことも多いです。ただし、この電流値は直列に入れた抵抗素子の両端の電位差を使ってオームの法則から算出したりしますので、これは電子回路の一部と見なしてわざわざセンサーと呼ばないこともあります。

なお、モーター自身の情報を何らかのセンサーで検知して、フィードバック制御によってモーターの角度(位置)、角速度、トルクなどを制御する仕組みのことを「サーボ機構」と言います。そして、サーボ機構を備えたモーターのことを「サーボモーター」と呼びます。サーボという言葉はモーターそのものの構造とは関係なく、モーターの周囲にフィードバック制御のシステム(回路)が存在することを示します。

モーターのサーボ機構は、モーターの制御をするためだけに用いられますので、モーターにセンサーとフィードバックシステムを含めた一体の「モジュール」として製品化されることが多いです。そのため、原理的にはモーターそのものとは別物であっても、「サーボモーター」というモーターの種類を表現した名前として用いられます。

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